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2005.02.06

母子保健新時代

とりあえず原稿。あとで整形。


母子保健新時代

この春から10ヵ年計画の次世代育成支援対策のための地域行動 計画が動き出す。わが国の少子化の状況は深刻で、将来の社会保障 制度そのものの存立も危ういとして、平成15年7月に同法律が制定 された。これまでエンゼルプランなどで行われていた児童福祉だけ では少子化の進行に歯止めがかからないとして、母子保健、教育、 労働、建設など横の連携を持って総合的に対策を推進するというね らいがある。

これまで母子保健計画に沿って行われてきた市町村のルーチン 事業(もちろん乳幼児健診も含まれる)の後ろ盾となってきた国の 母子保健課長通知がこの次世代地域行動計画策定に伴って、廃止さ れた。すなわち国のスタンスは、次世代育成という大きな枠組みの 中に母子保健は含まれるというものだ。飛躍しているかもしれない が保健(予防)が福祉(後追い)の枠組みの中に取りこまれたとも 考えられる。同じような現象は老人保健事業(市町村の基本健康診 査や健康相談など)が介護予防に重点を置いた地域支援事業にシフ トするというところでも見られている。住民の需要(デマンド)に 対してそれに見合ったサービス量を提供しつづけるという福祉の考 え方に対して、保健は地域に埋もれるニーズを拾い上げ施策に結び つけていくという流れなので、成果が見えにくい。

表題に「母子保健新時代」と掲げたが、旧時代、すなわち20世 紀のわが国の母子保健は素晴らしい活動を展開してきた。感染症や 低栄養といった課題に対して、予防接種や健診、家庭訪問などのシ ステムを作り上げ、全国一律の政策を効率的に地域で展開してこれ らの課題の多くを克服してきた。その成果を示す指標としてよく用 いられるのが乳児死亡率である。1950年当時150だった値が2000年 には一桁にまで改善し、しかも地域の格差も小さいという状況であ る。もちろん、その背景にある経済成長、栄養・衛生状態の改善と いった因子も寄与したことはいうまでもないが、国が決定した政策 を地方で遂行するという行政システムが、母子保健分野だけでなく 様々な分野で機能していた。行政がサービスの内容を決定し、住民 はそれを受けるという図式が一般的だった。

しかし、そのしくみはいつまでも続かない。高度経済成長や大 量消費社会を経ていくうち、人々の価値観やニーズが多様化し、国 も借金というツケを抱えてきた。そこで国が何でもかんでも面倒を 見るという時代から、「地域のことは地域で取り組む」という考え を基本とする地方分権という流れが出てくる。大きな政府から小さ な政府への転換である。地方分権では住民に最も身近な自治体であ る市町村がその担い手である。これらを受けて平成6年には地域保 健法が制定され、平成9年から健診事業などの一次的直接業務は市 町村に移譲され、市町村は少ないスタッフで多くのルーチンワーク を抱えるという図式ができたのもその頃からである。

健やか親子21はそんななか、平成12年に策定された。21世紀の 母子保健のビジョンが示された計画である。20世紀にわが国が作り 上げたシステムを用いて、21世紀の母子保健の課題(児童虐待、子 育て不安、不妊治療、荒れる思春期、子どもの事故など)にいかに 対応していくかという考え方で、これまでルーチン事業として行わ れてきた健診や訪問などを新たな課題に対応できる形にモデルチェ ンジすることを推奨している。昨年度から本協会がとりくんでいる 研究事業「乳幼児モデル健診」もその流れを受けたものである。し かし、これら多様化する課題にたかが健診や訪問などの「武器」で 太刀打ちできるはずがないということは自明である。例えば「子育 て中の親子がこの地域で充実した生活を送れる」という共通の目標 を設定し、親子はサービスを受けるだけではなく、自らできること を行う(自助)。地域では役所と住民と関係機関がそれぞれのでき ることを展開していく(共助)。役所の中では保健分野が他の教育、 福祉、労働、都市計画といった多部局と連携し、環境整備や政策づ くりを行う。そういう地域の実現を目指した考え方が健やか親子21 のベースにはある。

そして今、三位一体改革の影響を受け、これまで国から補助金 という形で配られた予算が「事業をこなせば金がもらえる」時代は 終焉を迎える。市町村の母子保健事業は、計画(次世代育成行動計 画)に基づいて行われ、自治体は配布された交付金を「その成果に 応じて配分」することになるであろう。乳幼児健診と言えども、そ の目的や成果を図る指標を設定し必要性を計画に明記していないと 財政サイドは説得できない。

新しい時代を迎えつつある今、母子保健も、「公助」だけでは なく「自助」や「共助」の比率を多くしなければならない。そのた めに何をなすべきか。住民の話に耳を傾け、共にどんな地域だった ら良いか話し合い、できることから行動を起こし、その活動を評価 する。本来の保健行政のあるべき姿をすればよいのである。

国によって決められた事業に追われる時代から、住民と話し合 い地域の問題を地域の力で解決する時代が到来するという認識で、 地域に目を向けよう。

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