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2006.02.21

ノロ アウトブレイク

コロラド州のガイドラインを参考にまとめてみた。
(Long Term Care Facilities は長期ケア施設と訳した)

長期ケア施設におけるノロウイルス集団発生時の調査と対策

ノロウイルスとは?
  • ウイルス性の胃腸炎を起こす
  • 比較的高い濃度の塩素(10ppm)や幅広い温度(冷凍~140℃まで)に抵抗性を示す
  • ヒトが唯一の宿主
  • レストラン、学校、保育所、キャンプ、クルーズ船、プール、病院、そして長期ケア施設などで流行を起こす
  • 鑑別すべきウイルスはロタ(小児から発生する)、アデノ、アストロなど
  • 潜伏期間は12-48時間
  • 症状の持続期間は12-60時間
  • 症状としては、嘔吐、腹痛、寒気、下痢(血性ではない)、頭痛、筋肉痛、微熱、悪心、倦怠感など。
  • 突然発症することが多い。子どもでは嘔吐が多く大人では下痢が多い。
  • まれだが、ひどい脱水になると致命的である(特に衰弱している高齢者で)
  • 感染者の吐物や下痢便が感染源になる
  • 感染経路は糞口感染で、(少ない量でも)容易にヒト-ヒト感染を起こす
  • 集団発生時には空気感染を起こすこともある
  • 高齢者長期ケア施設では大きな集団発生を起こしやすいといえる
  • アタック率は50-70%以上(入所者もスタッフも)
  • 最も感染性を持つのは気分不良から下痢が治まるまでの有症状期間だが、症状がおさまっても少なくとも2日間は感染力が残っている可能性がある(症状がなくてもノロウイルスを広げている場合がある)
  • 治療は抗ウイルス剤もなければワクチンもない。症状に応じて輸液や電解質の補正を行う
何をもって集団発生となすか?
  • 一般的に通常その施設で期待される下痢嘔吐の患者数を上回って患者が発生した場合
  • ノロウイルスによる集団発生は以下の2つに分類される
    1. ノロ集団発生(疑い):症状からノロウイルスが疑われるが、検便が行われていない、あるいは細菌検査だけしか行われていない、またはノロの結果が出ていない場合
    2. ノロ集団発生(確定):症状からノロウイルスが疑われ、少なくとも2つ以上の検体(別々の人の便)からノロウイルスが検出された場合
  • 集団発生も以下の2つに分類される
    1. 単一曝露による集団発生(下図左):汚染された食品や水などにより集団が病原体に曝露され、その一潜伏期間内に患者が発生する。流行曲線では早期に鋭い立ち上がりが見られることが一般的である
    2. ヒト-ヒト感染による集団発生(下図右):特定の感染源を持たず、徐々に患者が増加していくタイプで、長期ケア施設では訪問客、職員または新規入所者によってもたらされる
  • 注意すべきはノロウイルス感染症は、当初単一曝露として発生した後、職員を介して感染を広がり、ヒト-ヒト感染のパターンとして継続することもあるということ。
症例定義
長期ケア施設におけるノロ集団発生(疑い)では、「特に下剤などの薬剤使用などの誘因なしに発症日以降に、入所者または職員において嘔吐かつ(または)下痢が24時間以内に2回以上(軟便も含む)が発生した場合」に症例としてカウントすることを推奨する
報告の要求
集団発生があった場合は、すみやかに地域の保健部局に報告すること
ケース調査
施設内で急性胃腸炎の患者が発生したら、他の入所者や職員の健康状態を注意深く調査する必要がある。
診断と検査確定
  • 集団発生が疑われたら、便標本を確保しノロウイルスのPCR検査を行う。症状などによって他の菌や寄生虫卵の検査も行われるべきだろう。吐物でも検査は可能。
  • できれば患者便は症状発生後48時間以内(まだ水様のうち)に採取する。でも発症後7-10日後の便でも検査は可能である
  • 集団発生施設においては、2-6人程度の患者から便を採取することが望ましい
  • 集団感染の対策は検査結果が出る数日間を待つべきではなく、迅速に行うこと
対策(考え方)
  • 潜在的に集団発生があるとわかったらすぐに対策にとりかかること
  • 検査結果を待つべきではない
  • ノロウイルスは症状消失後も便から2週間にわたって排出されるので、最後の患者の症状がおさまった後も、2週間程度は注意が必要。
対策(手洗い)
  • 職員、入所者、訪問者は感染予防のための手洗いを意識しなければならない。集団発生時は普段よりも頻回に手を洗うこと
  • 手洗いができない状況であれば擦式の消毒剤やジェルを使用しても良い。あくまで手洗い後に追加して行うものである。
対策(職員)
  • 症状のある職員は感染症担当者に報告すること(一覧表を作る)
  • 症状のある職員は、特に厨房職員は下痢や嘔吐が消失して体調がすぐ回復したと思っても、少なくとも2日間は業務から外すべきである
  • 症状のある入所者をケアをするときは、使い捨ての手袋とガウンを用いて、一人の処置ごとに手を洗い、手袋とガウンを交換すること
  • 標準的予防策などについてスタッフで話し合う機会を持つこと
  • できれば嘔吐や下痢の処置をするときにはマスクを着けることが望ましい
入所者
  • 症状のある入所者は感染症担当者に報告され、一覧表を作ってフォローする
  • 症状がおさまって2日間が経過するまでは、有症状の入所者がいる部屋を制限し、接触感染に注意するべきである
  • 集団発生がおさまるまではグループ活動や集会は避ける
  • スタッフは、症状があって隔離されている患者が孤立感を感じないように、家族が頻回に電話をかけてもらうなどの努力をする
  • 感染区域と非感染区域を分けて入所者の行き来を制限する
  • 入所者に対する担当職員をできるだけ変えない
  • 嘔吐がある入所者に対しては吐き気止めの投与を考慮する
  • 病院に転院する際には、現在ウイルス性胃腸炎が流行している施設から送ることを病院に伝えること
施設
  • 集団発生がおさまって3~4日間(潜伏期間の2倍)は新しい入所者を入れない
  • 清掃と消毒を普段より頻回に行うこと(特に風呂場、浴槽、トイレ、手すり、ドアノブ)
  • 10%の家庭用塩素漂白剤(ブリーチ)や医療用消毒剤が有用
  • 日常的な診療用具(血圧計のカフなど)も清掃消毒すること
  • 食器類をディスポにする必要はなく、通常の食器洗浄でウイルスは除去できる
訪問者
  • 高齢者や子ども、そして基礎疾患がある人は集団発生がおさまるまで訪問を延期する
  • 施設内にいるときは、手をよく洗うように注意喚起する
  • 下痢などの症状のある訪問者(家族や友人)は症状がおさまるまで訪問しないこと

フローチャート(対策の流れ)

長期ケア施設で胃腸炎の症例が発生しているという連絡が入る(第1報)

  1. 集団発生に該当しますか?
    • はい:2へ
    • いいえ、わからない:新たな症例が発生するかモニターする
  2. 施設での対策実施をサポートし、検便の検体を確保しつつ、予備調査を行う 集めるべき情報は
    • 入所者、職員の患者数
    • 発症日と発症した患者数
    • 症状
    • 症状の持続期間
    • 施設内での患者の分布
    • 入院した患者、死亡した患者はいないか
    • 流行曲線を描く
  3. 集団発生のタイプは?
    • ヒト-ヒト感染パターン
      • 発生が何日にも渡ってダラダラ続き、かつ
      • 症状もノロウイルスと合致(血性ではない下痢、嘔吐、微熱、持続2日以内など)
      患者一覧表を作成し、新たな患者は追加して記入する/対策の効果や集団発生の経過を見るため、施設監視を続ける/終息後は報告書を作成する
    • 単一曝露パターン
      • 発生開始3日以内に患者数が急峻している、または
      • 感染源として心当たりのものがある、または
      • ノロウイルスと合致しない症状(血便、高熱、3日以上持続、重症化多いなど)
      疫学的な調査が必要になるため、専門機関の協力を得る (このガイドラインでは調査方法について言及していない)


あとはこういう情報をどのような段取りで発表するかについても慎重な検討が必要

地域の施設でも流行が見られます。日常的な感染症予防のチェックが必要です。
関連記事@北部福祉保健所(ノロウイルスによる食中毒に気をつけよう

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