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2006.07.08

結核と糖尿病(レビュー)

新旧「国民病」対決とでも言いましょうか。
結核と糖尿病の関係に関する文献レビュー(の訳)。
(  )内の番号は文献の番号だが、その一覧表は読んでココ君に読み取ってもらう予定。



結核と糖尿病の関係について
結核研究所での1週間の指名研修の最後に頂いた資料の訳(機内-自宅で訳)
出典はTuberculosis

  • 糖尿病と結核の関係は世紀を越えて示されてきた
  • Mortonは16世紀後半に糖尿病と結核のリンクを認識した(593)
  • 100年近く前には、糖尿病患者は糖尿病性昏睡か、結核で死亡していた(594)
  • Sosmanらは1927年に182人の糖尿病入院患者のうち9%が胸部X線で肺結核だったと報告した。3人以外は45歳以上であった(595)
  • RootはJoslinクリニックで1927年から1930年にかけて糖尿病患者の胸部X線を撮り、入院患者の2.8%、Joslinシリーズ10000人のうち2.45%、若年性糖尿病患者の1.6%という結核の発生率であることを報告した(596)
  • Banyaiは1927年から1930年にかけての糖尿病患者の発生率が2.6%(当時の一般人口の約3倍)というデータを報告した(597)
  • Boucotは1946年フィラデルフィアで大規模な調査を実施。糖尿病のある人(3163人)は、そうでない工場労働者の2倍(8.4% vs 4.3%)再発率が高いことを示した(598)
  • Silwerらは1954年スウェーデンの調査で、糖尿病の人のうちの結核発生は3.8%と一般人口の約4倍高いことを発表した(599)
  • 最近ではデンマークの調査で糖尿病の人の結核発症のリスクは3倍だった(600)
  • Kimは似たような結果として韓国での糖尿病の結核発症リスクは非糖尿病者の3.4倍高いとし、それは50歳以上よりは36から49歳で顕著だったとした(601)
  • さらに最近ではカリフォルニアで5290人の糖尿病患者のケースコントロール研究が行われ、Hispanicにおいて、糖尿病は結核発症の重要なリスクであるとした。Hispanicの25歳から54歳の集団においては、糖尿病が結核発症に寄与するリスク(25.2%)はHIV感染と同様(25.5%)であった(602)
  • Boucotは糖尿病患者が結核を進行させるのにいくつかの重要な要因があるとした(598)
    • 40歳未満の患者では糖尿病を10年以上患っている人では17%(10年未満では5%以下)
    • 糖尿病の重症度も結核発症に関係し、1日40単位以上のインスリンを必要とする5.3%の糖尿病患者は活動性の結核を患っていた
    • 体型では、標準体重を下回っている患者の方が2倍高く結核発症していた
  • Holdenらは重症の糖尿病の方に進行した結核発症が多いとした。空洞形成も1日40単位以上のインスリンを投与している患者に最も多かった(603)
  • 糖尿病患者の臨床症状は、非糖尿病患者と似ていると報告されている(604)
  • レントゲンの所見では、典型的な所見があるものとそうでないという両方の報告がある。
  • いくつかの研究では下葉に所見がある頻度が増えるとしている(595,605,606,610,611)
  • また、空洞形成もしやすいという報告もある(607-611)
  • しかしこのような特徴的所見に否定的な報告もいくつか見られる(80、604)
  • Perez-Guzmanらの後方視的研究では糖尿病患者の2/3に上下葉への浸潤所見が見られた(コントロール群では1/3)。さらに上葉への浸潤よりは下葉の所見が多く、空洞形成(特に下葉)が特徴的であるとした(610)
  • Bacalogluらは、空洞形成をするのはⅠ型糖尿病に多く見られるとした(611)
  • IkezoeらはCT所見について調べたが、特徴的な場所(下葉、上葉前方、右中葉)の所見が優位ではないものの、多発性の空洞(セグメントに関係なく)は多く見られたと報告した(608)
  • 糖尿病があると結核を発症しやすくなるメカニズムは解明されていない。
  • 細胞性免疫の変化が考えられているが、はっきりとした証拠は見つかっていない
  • 高血糖状態は単球-マクロファージ系の免疫機能の障害を引き起こすことはわかっている(612-614)
  • 肺結核患者には高血糖状態は良く見られる現象である。Bloomは新しくサンディエゴの海軍病院に入院した47人の肺結核患者のうち1/3が耐糖能異常を示したと報告した(615)
  • Musagiらは肺結核で入院した506名のうち82名(16%)が耐糖能異常、うち25名は糖尿病になったと最近報告した
  • 耐糖能異常は、結核の適切な治療により改善する(616,617)
    結核の化学療法が導入される以前は、結核は糖尿病患者の重要な死因となっていた。糖尿病患者で結核を発症したものの死亡率は平均20%であった(619)
  • Kesslerらが1930年~1956年までに行った調査によると、21447名の糖尿病患者のうち結核で死亡した患者が21名(期待していた値の1.5倍)であった(620)
  • 1914年~1920年にかけて肺結核は全死亡の4.9%を占めていた。この数字は1944年~1949年にかけては1.7%に減少し、1969年~1979年には糖尿病による死亡はなかった。ただし1964年~1980年にかけて剖検が行われた1043例からは2例の結核が発見されている(Joslin's Diabetic Mellitusより)
  • 効果的な治療により、糖尿病患者の結核も非糖尿病患者とおなじような経過をたどることができる。
  • Holdenらは1931年~1961年にかけての糖尿病患者に関する調査で、結核の化学療法を行う前の群では50%が退院後2年以内に死亡していたが、治療を行った群の死亡率は17%であった(603)
  • Lunz(622),Banyai(623),Ross(619)は大規模な調査で、糖尿病合併の結核患者の死亡や治療脱落の割合は、非糖尿病患者とほぼ同様であると発表している
  • 肺結核の治療が予後の改善に大きく影響するが、一方で糖尿病のコントロールが不良であれば結核の再発に影響することもわかっている。
  • Edsallらは糖尿病は結核患者の8%に同時に発生し、重症のアルコール依存症と肺結核の組み合わせ(25%)に次いでいた(624)
  • Basherらは糖尿病と多剤耐性結核の関係について報告している。糖尿病と結核を合併した患者の36%が多剤耐性であった(コントロール群では10%)(625)
  • 両グループとも上葉に空洞形成する傾向があった。
  • この研究ではニューヨークの病院で多剤耐性結核の流行が起こっていた時期に行われた。
  • だから糖尿病から多剤耐性結核にかかりやすいことよりも、市中の流行によって糖尿病→多剤耐性結核患者が発生したのかもしれない(626)

糖尿病を診ている医師のうち、毎年胸部レントゲン写真をチェックしているものの割合は約50%だった(H13コザ保健所調べ)

結核緊急実態調査によれば、わが国の結核患者で糖尿病を合併する割合は約10%であった。


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