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2007.07.31

積極的疫学調査vs個人情報保護

法律の解釈は高度な知識とテクが必要と思われますが、
一応、積極的疫学調査と個人情報保護の関係について
下のような意見が示されました。

改正感染症法下での結核対策(IASR28-7 加藤誠也結核研究所副所長)によると

3.接触者健診について 接触者健診は初発患者および接触者の調査と必要な対象者の健康診断の二つの要素から成り立っている。結核予防法ではこの調査に関する法的規定がなかったが、感染症法第15条に積極的疫学調査、すなわち、都道府県知事による感染症の発生状況、動向、原因に関する調査権限が規定されており、これに基づく調査となる。なお、法第15条には、調査対象者に「必要な調査に協力するよう努めなければならない」という努力義務規定があり、これに基づく調査には、個人情報保護法等に基づく情報の利用制限の適用除外規定が適用される。
と解釈されている。 すなわち個人情報保護法には
 (利用目的による制限) 第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用 目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。 2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに 伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。 3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。 一 法令に基づく場合  二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難で あるとき。 三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を 得ることが困難であるとき。 四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対し て協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすお それがあるとき。

結核(及びその他の感染症)に罹患した患者と接触したもの、あるいは
その患者に感染させた疑いがあるものについては、都道府県による調査
に協力するよう努める。
同様に、学校や会社などの管理者はその接触者のリストを提出するなど
調査に協力するよう努める。この際に個人個人の同意を得る必要はない
ということになるようです。
これは麻疹にも当然あてはまります(よね)。

法令の解釈のせめぎあいになると、やはり弁護士や法令関係者が
必要になる。感染症審査協議会に彼らを入れるべきという事情も
訴訟社会であれば了解可能。

ちなみに第18条就業制限について

(就業制限)
第十八条 都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症又は三類感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第十二条第一項の規定による届出を受けた場合において、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知することができる。
2 前項に規定する患者及び無症状病原体保有者は、当該者又はその保護者が同項の規定による通知を受けた場合には、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。

結核に関しては、原則全員(刑務所に服役中のものを除いた
全員という意味で、赤ちゃんや寝たきりのものも含めて)その
対象になるということです。空気感染するから?

やはり法律の解釈ってムズカシイ...

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2007.07.30

結核予防法亡き後の結核対策

Img217

財団法人結核予防会編
「改正感染症法における結核対策」保健所の手引き
税込み4725円



結核の会議&研修のため長崎の諫早へ。
結核研究所の先生方がお勧めの本がこれ。
この3月で廃止された結核予防法から改正感染症法への
移行に関する一連の文書とその解説が書かれてある。
初版限定2000冊のみ発行だそうです。

この他にもQFT(クォンティフェロン)の使用指針もリニューアルされ
新規購入の必要性があるとのこと。

何だかお買い物情報のようになってきましたが、その背景には
旧結核予防法から改正感染症法に移行するにあたって、結核対策では
旧法の関連通知類で行われてきたいろいろな取り決めがあるのに
4月に移行されたのはその一部のみという状況があります。

法律の本体が廃止されて本来なら一緒に死んだはずの旧通知類は、
まだ全部は整理できず、新しい通知や文書が来るまでは参考にする
(すなわち生きている)という解釈でいいようです。

まだ成仏できない結核予防法...

で、通知行政の整理シリーズとして、接触者健診の手引きは
国から近々ジムレンが来て、晴れて「お墨付き」となるらしい。
また、初感染結核の公費負担の年齢枠(29歳以下)撤廃の話や、
入院基準、退院基準に関する見直し(退院させなければならない
基準、退院することができる基準)などは、7月30日(今日)午後
行われる厚生科学審議会の感染症担当分科会結核部会で
詳しく話し合われる
そうです。要注目!


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2007.07.25

たばこと心中 セカンドライフ

ブログが滞っているのはまじめに仕事してる証拠
と上司に励まされた日、 新聞でこういう記事を見つけました。 思わずブログに乗せてしまった(仕事もしてます一応)

たばこで余命3.5年短縮 40歳時点で(産経web)

 1日2箱以上吸う男性の余命は、1箱未満よりも0.9年短く、
ヘビースモーカーほど短命の傾向がうかがえるという。
喫煙が健康に悪影響を及ぼすことは広く知られているが、
たばこの影響を余命で示したのは国内初の試みという。

日本人の疫学データは国立がんセンターの多目的コホートにも
たくさん蓄積されている。そのうちの「たばこと死亡率」ここには「余命」ではないけど
今回の調査集団に、はじめから一人も喫煙者がいなかったら、
10年間の死亡のうち、どれくらいを予防できたのかを推計して
みました。すると、たばこを吸う男性で起こった死亡646名中の
225名(全死亡10 14名中の22%)、たばこを吸う女性で
起こった死亡50名中の25名(全死亡500名中の5%)が、
予防できたはずという結果でした

多目的コホートは毎年研究成果を発表しているが
今年の夏は沖縄で来る週末に開かれます(フェストーネ

Yomyo

で、引用だらけの前置きが長くなりましたが、若い喫煙者に
とっては、この快楽のためなら3.5年余命が短縮することを
あまり気にかけない人もいるかもしれない。

英国におけるデータがこのグラフ。
40歳の時点で喫煙してるかしていないかの30年後を比較


吸わない群は80%が生存、吸う群は50%のみ生存
これは50代も後半に差し掛かり、定年後のセカンドライフを
計画している人には重い話だろう。健康チェック(健診等)で
たばこに起因する疾患(がんや心筋梗塞、脳卒中等)が
見つかり、60代は通院闘病入退院生活で病院通い。
そしてついに仲間たちより先に寿命を迎えるというものだ。
まさに たばこと心中 セカンドライフ。

願わくばこういう図を喫煙所と呼ばれる場所に貼って、
みんなを禁煙に導き、いっしょにセカンドライフを楽しもう。

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2007.07.19

日脳 DO YOU KNOW?

ooyake夏が来る前に日脳打とう
と1ヶ月前に記事を書いたら、7月15日朝日の一面に
ワクチン不足の記事が、台風4号を押しのけて載った。

日本脳炎、接種中断が4年以上に 新ワクチン開発が難航

副作用の影響で、05年から事実上中断されている日本脳炎の定期予防接種の再開が、新型ワクチン開発の遅れから、大幅にずれ込むことが分かった。再開は09年以降になる見通しという。当初1年程度とみられた中断期間が4年以上に延びることになり、専門家からは感染者の増加を心配する声も出始めている。旧型ワクチンはすでに製造体制がなく在庫量も限られており、厚生労働省は対応に苦慮している。
(中略)定期接種の中断が4年になると、09年には6歳以下の大半は免疫をもたないことになる。昨年9月には熊本県内で3歳児が発症。15年ぶりに5歳以下の発症が確認された。これを受けて同省は今年5月、旧ワクチンの接種希望者への情報提供や、医療機関などの在庫を調べて不足地域に融通することなどを求める通知を都道府県に出した。
などなど日脳を巡る問題をリポート。 日本小児科学会が懸念していた問題が現実化した形になった。

沖縄にも観光客から「夏休み旅行に行きたいんだけどワクチン打っていた方が
いいですか?」との問い合わせもある。これは九州も同じだろう。
関係者は豚の抗体保有状況をチェックして情報を共有している。

「nichinou.ppt」をダウンロード

先日勉強会で使った資料(「ニチノウ ドーユーノ?」)
を一部改変してアップします。
ご自由にお使いください。

(追記0720)
Tky200707190518

厚労省から啓発ポスターが届きました。

可能な限り蚊を避ける作戦です。

ワクチンについては「市町村のお問い合わせください」とのこと...

朝日は「苦肉の策」と評しています

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2007.07.13

夏のインフルエンザ(沖縄・3年連続3回目)

先週の沖縄タイムスで報じられたインフルエンザ流行の兆し

今夏、県の定点調査で注意報発令基準を超えたのは六月十八日―二十四日の週から。県は、七月二日―九日までの状況を見て患者増の傾向が続くようなら流行注意報を発令する考えだ。
Image82



ということで様子を見ていたが、やはり少しずつ報告数は増加し、
昨年、一昨年の流行のこともあるため、注意報発令の情報を
提供した
グラフは沖縄県感染症情報センター提供のもの。
グラフから明らかに15,16年とは流行するシーズンも遅くなり
夏場(といっても6月~7月にあたるが)に再び山がある。

今回の流行は

  • 春先からの流行が完全におさまったのではなく、ダラダラ引きずっている
  • 5-9歳の学童の割合が高い
  • 学級閉鎖も6月、7月と報告が多くなっている
  • ウイルスのタイプではA(H3)、A(H1)、Bそれぞれが検出
  • 南部ではずっと警報レベルを維持しているが、特にここだけ激しく流行しているわけではなさそう(宮古や石垣の学級でも流行)

などの特徴がある。

肝心の原因については、よく聞かれるが「原因不明」としか回答できない
のが事実である。でもいくつかの説はあることはある。
(昨日はテレビ局のディレクターにもしつこく聞かれた)Pf29741




  1. 沖縄は東南アジア(たとえばタイ)の流行パターンに近づいている(IASR沖縄県衛研論文
  2. 沖縄の医師がこれまで「夏風邪」で片づけていたものを迅速キット等できちんと診断するようになった
  3. 学校での流行が起こりやすい環境(集団行動、中体連、プール開始、冷房+乾燥等)が揃う時期。夏休みがはじまると流行は去っている。
  4. 南半球と北半球の移動が盛んになったため...
など諸説飛び交っている。
上の中では
地球温暖化に伴い感染パターンが東南アジア型に変わりつつあるという説に基づく1番がもっともそれらしい
。2は地域によって医師の診断方法がそこまで変わるとは思いにくいし、」3は冷房を備えている学校は全体の半分程度。クーラーない学校でも流行がある。
4は何で沖縄だけ?という疑問が残る。
もちろん上記のコンビネーションもありうると思う。

いずれにしても、流行が収束するように特に有症状者への
咳エチケット励行を呼びかけ、
流行にまぎれて新種ウイルスが含まれていないかなど
目を光らせておくことが必要だ。

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2007.07.11

ゼロリスク探求症候群

霞ヶ関の厚生労働省に呼び出され、予防接種に関する検討会に
出席してきました。沖縄県のこれまでのはしかゼロプロジェクトを
中心とした取り組みや今年の発生状況、全数把握の重要性など
プロジェクト委員長ともども報告してきました。

国では2012年を目標に麻疹排除計画を策定し、その中で今年
多数感染者が出た「1回接種でその後ブースターが少ない世代」
に対するキャッチアップキャンペーンの方法が例示されました。
中1と高3に5年間の時限措置としてワクチン接種を行う(朝日)
次年度からの導入を目指して

  • 定期接種として実施
  • キャッチアップの期間
  • ワクチンメーカーの供給体制
  • 学校における集団接種の可能性
  • 費用負担
などなど解決しなければならないテーマはたくさん。
これらを次回(8月1日)の検討会までには事務局で整理するとのこと。
次年度導入が正式に決まれば県や市町村はその制度改正の準備に
追われることになります(また忙しくなるね..)。

昨日の検討会にはこの叩き台(案)に対して、さまざまな立場から
意見が述べられました。(カンガエルーネットワクチントークSSPE青空の会など)
結局座長がまとめた通り、麻疹という病気の内容、ワクチンの効果と副作用
に関する情報提供のあり方を議論しておりましたが当然結論は出ません。

その中で「厚労省はゼロリスク症候群を煽っているのでは...」との
スライドがあったので、調べてみました。

ゼロリスク(探求)症候群とは(提唱者?池田正行氏のwebsiteより)

一言で言えば,”ゼロリスクを求めるあまり,リスクバランス感覚を失い,他人が犠牲になることも理解できなくなる病的心理”です
特徴として
  1. 感染症・中毒といった病気や,食品・飲料水といった生存に必須な物資の安全性を求める行動が根本にあるので,正当化されやすい
  2. リスクを過大に評価する誤解やデマが背景にある
  3. 個人レベルでは影響がないか,ごく小さい
  4. しかし多数派化・集団化によって社会問題化する
  5. ゼロリスク探求により生じた社会問題の責任を,行政やメディアに求める

この言葉が出てきた背景となったのは狂牛病騒ぎらしいですが、
麻疹ワクチン予防接種では、リスクを追うのは、自分ではなく
子どもやその周辺に及ぶことは忘れてほしくないと思います。

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2007.07.07

搬送中救急車内で出産4件、県立北部病院

久々に感染症以外の話題。
先日県議会の文教厚生委員会での陳情案件を議論中、
(席がないので廊下でそのやり取りを聞いていたら)
まずH議員がこの件で質問していた。
搬送中に車内で出産4件(琉球新報ニュース)

2005年4月以降、北部地区から県立中部病院へ搬送された妊婦は169件で
このうち救急車内出産した例が4人いた。それぞれ医師は添乗せず
救命救急士が子どもを取り上げた。

お隣のK議員も身近に未熟児で出産した人がいたとのことで
未熟児は病院で生まれても大変なほどのさまざまな処置が必要だ。
それなのに救急車の中に保育器などの措置する機器がないのは
問題だ。人の命を軽視しすぎている。

この記事にはいろいろな問題が含まれているが、それに対して
  • 保育器がないから保育器を置く
  • 医師が乗っていないから医師を乗せる
  • 産婦人科医師がいないから、産婦人科医師を探す

という一問一答式で対応していたら何年たっても解決しないだろう。
(しかし県庁では一問一答形式の「想定問答」が議会バイブル)
全体の問題を整理して、方向性や目標を関係者で確認しましょう。

救急車内に保育器を載せたら問題解決するのではなく

  • きちんと定期健診を受けたり、夫婦で禁煙するなど妊娠中の健康管理を行う
  • 緊急時の搬送体制について地元産科、県立北部、県立中部、消防で確認する(済)
  • 数少ない産科医師が働きやすいように保健と医療が連携するなど
現場のみんなで課題を話し合っていくことが大切です。

保育器はむしろ中部病院で生まれた未熟児が北部病院に戻る(逆搬送)
の際に必要なものです。届け!現場からの提言

北部のみんなは今もこの活動を地道に続けています。

関連シリーズはこちら

17万アクセス突破記念。皆様に感謝いたします。

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2007.07.02

いきなりエイズ56%→15%へ

いきなりエイズというのは、HIV陽性が判明した時点で
すでにAIDS(後天性免疫不全症候群)を発症していること。
すなわち感染から6-10年と言われる潜伏期間(症例に
よってはもっと早く発症することもあるという)を経過後に
判明している例のことをいう。

すなわち

  • 本人の治療に対する予後が悪い
  • 気づくまでの間にパートナーに感染を拡げていた可能性がある
という面から心配。

ここ沖縄県では平成15年までのいきなりエイズの割合
AIDS患者/(HIV感染者+AIDS患者)は56%それが検査数が増加してきた平成16年以降の3年では15%となった。

ではどうして検査数が増加してきたか(これが宿題のテーマ)

禁煙や生活習慣改善などでよく引用される
Prochaska JOの汎理論的モデル(The transtheoretical model)

行動変容は、多くの場合、長期間にわたって段階的に達成される

という前提でそれぞれの支援モデルを考えるときに有用である。

(無理やり強引に)エイズ検査受検からその後の行動変容の
段階をあてはめてみた。

  1. 無関心(熟考前)期

  2. 関心(熟考)

  3. 準備期
    • まずは検査で確かめようという気持ちになる(検査は自分にとって必要なものであると認識する)
    • 検査を受けるための情報を集める
    • 検査を受ける段取り(休暇をとる、場所を確認する、陽性の際の対応を考える等)を進める

  4. 行動期
    • 保健所を訪れて検査を受検する
    • 自分のパートナーや知人にも検査を勧める

  5. 維持期
    • 感染の心配がある性行動をしない
    • 心配な接触があれば再び受検する

沖縄県の場合は

  • 1.若年出産、離婚など性行動に関連している(と思われる)問題が多い
  • 2.HIV感染者/AIDS患者の報告数が増加中。全国強化指定自治体。
  • 2.県や保健所でもキャンペーンなどで情報が流れてくる
  • 3.その日で結果が出る即日検査を実施している(全保健所)
  • 4.保健所は健康診断などでかつて訪れたことがある場所だったりする
  • 4.車で1~2時間ほどで本島内4つの保健所を回れることが可能
  • 5.横のつながりが強い

などの特徴があり、受検者数増加のサイクルが回っている
(準備しないでパッと行動に出るパターンもあると思うが)

今のところ受検者増加→HIV感染段階での発見→医療機関でフォロー
という流れになっている。しかし、感染者や患者の発見増加に伴って
(また治療によるコントロール向上に伴って)受け皿となる医療機関が
拠点病院だけでは不足するという事態も生じている。

検査数を全体的に増やして、いきなりエイズを減らすことを
当面の目標にしたい

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