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2008.02.28

時間的空間的広がり(新型インフルエンザ)

この記事は読者にどのくらいのインパクトを与えたんだろう。
琉球新報2月28日夕刊
記者は最後まで講演を聴いて熱心に取材をしていた。

数を読むのと、実際の広がりを視覚的にみせられるのは
全然違うと思う。スライドは示せないが、大日研究官が
国立感染研究所で行った危機管理研修のものが参考
なる。



新型インフルエンザ想定 本島南部1人目感染→11日目3218人
高病原性鳥インフルエンザ(新型インフルエンザ)について
国立感染症研究所は28日までに、本島南部で1人目の
感染者が発生した場合、11日目には3218人に感染し、
高熱などの有症者は2759人に上ると想定していることが
分かった。

感染者発生後に爆発的な勢いで広がるため、自治体や保健所、
医療機関での入念な対策が急務となっている。
27日に那覇市医師会館で開かれた新型インフルエンザに
ついての講演会で同研究所の大日康文主任研究官が明らかにした。

大日研究官は新型インフルエンザ感染者の約半数が3―6日の間に
発症することを踏まえ、県内で人口が集中する本島中南部の感染
拡大の想定を発表。感染者数は1人目の発見から3日目で8人に
増えるが、その時点で有症者は最初の1人だけで、1週間後には
感染者492人、有症者168人に拡大。11日目には感染者3218人、
有症者2759人に上ると説明した。
 
その上で感染者が出た場合、拡大防止には

「外出自粛が非常に効果的」
と強調した。
(琉球新報2/28 16:08)


パーソントリップデータを用いた新型インフルエンザのシミュレーション
ということで紹介していた。

沖縄で3000人あまりという数にしかむかもしれませんが、
その同じ日、東京首都圏では12万人と桁違いに増えていることも
お忘れなく。

最終的な感染者の数は同じであっても、その増加のスピードが
現在の医療供給体制をはるかに超えてしまえば、死亡や重症者が
増加してしまう。このピークをなるだけ遅らせる・低くするのが課題。


全国版の作成にも取り掛かるということでした。

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2008.02.25

「麻しん輸出国」と呼ばれないためには...

2012年を目標とした麻しん排除計画を進めるために

麻しんに対する特定感染症予防指針(PDF)

の中で(特にハードルが高いと言われている)学校との連携に
ついて調べていたら、このニュースにぶつかった。
米国のはしか流行 感染源は日本の野球少年
[ワシントン 21日 ロイター] 米疾病対策センター(CDC)は21日、
国内で少なくとも6人がはしかに感染したことについて、
ペンシルベニア州で行われた「リトルリーグ・ワールドシリーズ」に
遠征した日本の少年野球の選手(12)が感染源だったことを明らかにした。
 CDCの報告書によると、はしかの感染は昨年の8月から9月にかけて
ペンシルベニア州、ミシガン州、テキサス州で報告されていた。
 感染者には、デトロイトからボルティモアへの飛行機内で少年の近くに
座った女性(53)や、デトロイトの空港の税関コーナーで少年に接した
男性(25)などがいるという。

原文のMMWRはこちらで見れます。
世界大会を勝ち進んでワールドシリーズで負けた日本のチームに
麻疹がいることは聞いていましたが、その後+4名に拡がっていた
のは知りませんでした。図を見ると3次感染までリンクが確認されています。
患者像で特徴的なのは
  1. 初発は7月に東京ではしか様患者と接触した12歳少年(D5)
  2. 症例1と同じチームの12歳少年で遠征後に発症(D5)
  3. 53歳女性で少年1が米国内便で移動する際、前列に座っていて感染(D5)
  4. デトロイトの空港で症例1と接触した25歳男性
  5. ペンシルベニアで症例1と接触した40歳男性(接種歴なし)
  6. 症例5が入院前に訪れていたヒューストンの大学生18歳
  7. 症例5が入院前に訪れていたヒューストンの大学生19歳

地名がピンと来ませんが、8月中旬から約1ヶ月の間に、米国内で
ニッポン発のD5麻しんウイルスが拡がったと思われます。
気になるのは症例6と7が、米国で出生して、2度のMMRワクチン接種を
済ませているのにもかかわらず発症しているということ。
全体的な患者年齢が高いのも去年あたりの日本の流行と共通してるね。

で、こういうニュースはWHOのIHR(国際保健規則)によって
各国に報告されるため、また「ニッポンから輸入された麻しん」となる。

そう呼ばれることがいやなら(みんなイヤだと思うけど)対策をみんなで
進めていくしかありません。というわけで件の特定感染症予防指針。
必要な措置の中に、これに関連する記述もありました。

厚生労働省は、国土交通省に協力を求め、旅行会社等に対し、
外国へ渡航する者に、国内の麻しんの発生状況、外国で麻しんを
発症した場合の影響等についての情報提供を行うよう依頼する
ものとする。
また、文部科学省に協力を求め、学校で外国へ修学旅行する際に、
麻しんの疾病としての特性や麻しんの予防接種についての情報提供を
行うよう依頼するものとする。

大切なことは、繰り返さないことですが、そのためには問題を問題として
認識する人を増やすことが必要(大丈夫かなぁ)。
その手段として、外圧も時には有効だと思います。

カナダからの外圧とか。

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2008.02.21

結局子どもにインフルエンザワクチンはどの程度接種されているんですか?

議会答弁割り振り調整バトルで疲れ気味ですが、
NHKラジオ深夜便をBGMにして宿題しています。
(あの淡々とした語り口調に癒されてる人も多いはず=年のせい?)

子どもに対するインフルエンザワクチン接種については、
接種反対派と効果推進派との論争がかなりの数ヒット
するんですが、では実際に接種率はどうなってるの?
と問われるとなかなかデータが見つかりません。

ワクチン接種の効果については、小児科学会の声明
乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について-日本小児科学会見解-

わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、
インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、
有効率20-30%であることを説明したうえで任意接種として
ワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える。

接種率については、北里研究所HPのQ&Aによる
「1992年には17.8%まで落ち込みました。さらに、1994年に改正された
予防接種法では接種の基本が個別接種に変わったため、学童に対する
集団接種は中止され、勧奨接種の対象からも外され任意接種となりました。
これによりインフルエンザワクチンの接種率はさらに低下して数%以下となりました。」

というのが参考になり、実際、県の古いデータでもその辺りの数字です。

では最近の接種状況はどうなってるんでしょうか。
ワクチン製造量の推移から見ると「復活」?Influvaccine




このグラフの出どころでもある厚生労働省の需要検討会
感染症研究所の大日主任研究官のレポートがありました。
それによると
モニター家庭へ調査をかけた結果、13歳未満の子どもの接種率は
05/06年は39.9%→06/07年は27.2%と大きく落ち込んでいます。
07/08の需要予測では

  • 医療機関における需要予測では52.1%
  • 世帯調査では35.3%

結局、接種率は
  • 幼児・児童で35.3%(95%信頼区間が[34.5,36.1]%)(約3人に1人が接種)
  • 成人で18.1%(95%信頼区間が [16.7,19.5]%)(約5人に1人が接種)
  • 高齢者で54.3%(95%信頼区間が [51.9,56.7]%)(約2人に1人が接種)
  • 年齢計では28.0%(95%信頼区間が[26.4,29.5]%)......
とまとめられています。
2005年麻しんの大流行が、結果的にインフルエンザワクチンへの
信頼度を高めているという考察も興味深いですね。


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2008.02.16

痢再来(リサイクル)

今年は半日開催となった地域保健全国大会@群馬
資料が回覧されてきたので、パッパと中を見てみると...

ノロウイルス防止訓なる標語(語呂合わせ)があった。

  • ノックアウトは加熱・塩素剤
  • 老人・子どもは要注意
  • うつるくせ者 ヒトからヒトへ
  • いつでも重要 手洗い・消毒
  • ルールは毎日 健康チェック
  • 少しの量でも感染する 生ガキ生食要注意!

この下に
断て!痢再来

という見慣れない文字があり、ルビを読むと「リサイクル」だって。

ヒトを中心に据えて2つのサイクルが描かれていた。
一つ目

  • ヒト
  • 吐物・患者便
  • 手・調理器具・食器
  • 食品
  • ヒト

二つ目
  • ヒト
  • 吐物・患者便
  • トイレ
  • 下水
  • 河川

  • カキ等
  • ヒト

この2つを称して下痢サイクルじゃなくて痢再来と呼ぶらしい。
中国語みたいね。

もっとも最近の集団発生は一つ目のサイクルがグルグル回転
するためだと思います。カキ由来ノロもあまり聞かない気がする。

消毒方法の問い合わせ等があった際は厚労省のQ&Aを照会しています。
厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A

追記!
埼玉県のホームページに痢再来(リサイクル)のPDFがありました。
コバトン食の安心情報
コバトンって

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2008.02.09

事業所と新型インフルエンザ

大先輩から次のような質問をいただいた。

産業医をしているのですが、事業所や従業員に対してどのような
新型インフルエンザ対策が必要かいろいろ聞かれています。
どう答えたらいいのでしょうか?教材などありますか?

事業体におけるガイドラインは国からも発表されている

他にCDCから出されているチェックリストを青森県のサイトで紹介
(訳まで!)しているのを発見。参考になります(下に概要)

これらを整理して雛形を示したいところ。
(まずは県庁職員の計画づくりが急がれますね)



1.パンデミックの影響を最小限に抑えるための計画を策定する

  1. 従業員の意見も取り入れて、事業所としての行動計画を策定する
  2. パンデミック時活動を維持するため、必須の従業員及び重要な事項について事前に確認すること
  3. 正規の従業員以外の要員を確保し、パンデミック時に備えた必要な訓練をしていること
  4. ある分野の製品やサービス需要の増加又は減少を想定した計画を策定する
  5. 製造ラインや生産拠点への影響を多角的に想定して、財務状況への影響について検討すること
  6. 国内外の出張旅行が制限されることによる影響について検討すること
  7. 地域の公衆衛生当局(保健所など)その他の情報提供源から、最新かつ信頼できる新型インフルエンザ対策関連情報を得ること
  8. 緊急時における情報提供計画(連絡網など)を策定し、定期的に確認すること。
  9. 行動計画が実用的かどうかを確認するために実働訓練を実施し、定期的に更新すること

2.パンデミックによる従業員への影響を最小限に抑えるための計画

  1. パンデミック時において、様々な要因により、多くの従業員が欠勤となった場合の対策について検討すること
  2. 従業員同士頻繁かつ直接的な接触方法を抑制する方法を規定したガイドラインを策定すること
  3. 従業員に対し、毎年のインフルエンザワクチンの予防接種を勧奨すること
  4. 従業員に対する保健医療サービスを提供する手段の確保について検討すること
  5. 従業員に対する心のケアや福祉サービスを提供する手段の確保について検討すること
  6. 特殊な介助を必要とする従業員及び顧客への対応方法について規定すること

3.パンデミック時における対応方針の設定

  1. パンデミック時における就業補償や病気休暇に関する方針を決定しておくこと
  2. 勤務場所及び勤務時間に柔軟性をもたせるような方針を決定しておくこと
  3. 職場におけるインフルエンザのまん延防止に関する方針を決定しておくこと
  4. 新型インフルエンザ患者・疑い患者となった従業員、あるいは接触者の対応に関する方針を決定しておくこと
  5. 新型インフルエンザ発生国・地域への出張の制限及びその周辺国に勤務している従業員の避難に関する方針を決定しておくこと。
  6. 行動計画の実行開始・終了に関する権限を有する者及び手順等について決定しておくこと

4.パンデミック時に従業員と顧客を保護するための資機材の配置

  1. 速やかに準備ができ、かつ十分なインフルエンザ感染防止のための資材(手指衛生用品、ティッシュ、専用廃棄物容器など)を事業所のすべての場所に準備しておくこと
  2. パンデミック時において、在宅勤務をする従業員と顧客との情報交換を行うため、必要に応じて通信・情報提供手段を維持するための基盤整備を行うこと
  3. パンデミック時において、医学的な相談・助言を受けることができるようにしておくこと

5.従業員との情報交換と教育

  1. 新型インフルエンザに関する基礎知識、個人や家庭での予防及び発症時の対応方針に関する教育プログラム及び教材を策定し、その対応方針に関する啓発普及に努めること
  2. 来るべきパンデミックに対し、従業員が恐怖・心配、噂、誤情報を抱くことがあることを予想すること。
  3. 情報提供の方法が、文化的・言語的に正しいものかどうかを確認すること
  4. 従業員に対し、事業所等が策定する行動計画の内容について啓発普及し、パンデミック時に備えた対応について理解を得ること
  5. 在宅療養している従業員又は罹患したその家族のためにどのような情報を提供すべきか及びその提供の手段について検討しておくこと
  6. 新型インフルエンザの発生状況のほか、従業員・販売者・供給者・顧客に対して事業所等が行う対応に関する情報を一元的かつ適時な方法で提供するために、特定のハードウェア環境を整備する
  7. 地域(都道府県、市町村等)におけるパンデミック関連情報及びその対応策に関する情報を得るための方法を確認すること

6.他の事業所との連携、地域への支援

  1. 計画を策定する場合には、地域の公衆衛生当局と協働して(参加者を得て)策定すること。この協働の過程を通して、それぞれが実施可能な事項を確認するとともに、それぞれが策定した新型インフルエンザ対策行動計画の内容を理解すること
  2. 事業所等が提供するサービスのうちインフルエンザ予防などに関して地域に貢献することができたものについ
    て、地域の公衆衛生当局(保健所、都道府県の感染症対策部門など)と情報交換を行うこと
  3. 他の事業所等と共同で実働訓練を実施し、地域における新型インフルエンザ対策の内容を改善していくようにすること

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2008.02.07

エピデミックな一日

今日はどっぷり読書の一日でした。

ちょうど24時間前に目覚ましで起きてダイドコ片してから
発表原稿ファイルを作り、職場で印刷&メールして空港へ。
書店で(8時前から空いててくれた!)探した本をシャリーン
してそのまま機内に持ち込みました。その本とは

川端裕人「エピデミック」角川書店

テーマは新興感染症に挑む実地疫学の専門家たちの
フィールドワーク。読み応えあって面白いです。沖縄出身?
という設定なのも親近感がわくし、何より実際に全国で
アウトブレイクの火消しに飛び回っているFETPの活動が
イメージできて(こんな重症対応はないと思うが)大変
興味深い一冊でした。

更に、この本を飛行機、電車で読みながら、向かった先が
たまたま国立感染症研究所で、本物のFETPや指導スタッフ
と同席できたのは、軽い興奮すら覚えてしまった。
これを読んだらFETPに派遣する自治体も増えるのではと
思うほどの作品です。

帰りの便でも読んで、モノレールで県庁に着く前に読み
終えることができました(23:30だった)。内容紹介ブログです。

サーベイランスの会議と重ね合わせて感想を述べてみると....

  • 調査や分析をするなら、明確な目的を持ってすべき
  • 未知の病原体であれば「症例定義」が重要

というところでしょうか。

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