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2008.11.30

寄生虫との100年戦争は終わらない...

寄生虫との100年戦争というのは
日本住血吸虫という寄生虫のこと。

  • 住血吸虫症は、成虫が静脈内に寄生することで生じる疾患
  • ヒトが河、湖、沼な どの淡水に入って感染する
  • わが国では以前、日本住血吸虫症が特定地域に多発していた
  • 今では撲滅されて新たな患者発生は見られない
  • かつてわが国にも、甲府盆地をはじめ、九州の筑後川流域、
    広島県片山地方、静岡県富士川流域などに、流行地があった
そうだ
肝臓にも病変が及ぶため
肝では肝線維症へと進行し、特徴的な画像所見を示し、長期経過すると
肝脾腫、門脈圧亢進、腹水、食道静脈瘤の形成、そこからの出血をきたす。
これらの変化は日本住血吸虫症の方が顕著にみられる。
肝臓の病変は一見して肝硬変に類似するが、肝機能は長期間正常に保たれることが多い。

しかしその後患者は減少し、
1996年2月、地方病撲滅対策促進委員会(会長=刑部源太郎 県医師会長)は、
当時日本国内では、山梨県だけに残っていた、日本住血吸虫病について、
「地方病の流行は終息し、安全と考えられる。」という報告書を
天野県知事に提出しました。
山梨県はこれを受けて「山梨県の地方病の流行は終息した。」と、
「流行終息宣言」をしました。
と100年余りに及ぶ寄生虫tの戦いは終結した。

この寄生虫の流行地が、C型肝炎の患者集積地域と一致している
という噂は前にも聞いたことがあったが、先日のC型肝炎の研修会で
詳しく教えていただきました。

前出の国立感染症研究所「感染症の話」では両者の関係には
触れられていませんが、第23回日本医学会のシンポジウム記録集「わが国の慢性肝疾患、特に肝癌の疫学的特徴」では

一般人口におけるHCV 抗体陽性率を世界的にみると,
日本のほか,エジプトやモンゴルに高いことが示されている3).エジプトで
は,特にナイル川流域で高いが,この原因と
してこの流域に流行していた住血吸虫に対す
る注射治療(Parenteral Antischistosomal Treatment,
PAT)における注射器・針の汚染が挙げられている4).

また,東日本の中で特に山梨県でHCV 抗体陽性率と
肝癌が高い理由として,この地域に流行していた
日本住血吸虫症の治療における酒石酸ナトリウムアンチモニウムの
頻回な静脈注射が感染の機会を増やしたものと推定されている5).

寄生虫を撲滅するために、その当時の知見では最善の治療だった
静脈治療によってHCVが蔓延し、その結果として慢性C型肝炎、
肝硬変、肝臓がんによる死亡率が高くなっているというサイクル。
そういう意味で100年戦争は終わらないということになる。

国は肝炎対策として昨年来踏み込んだ施策を展開している
厚生労働省「新しい肝炎総合対策の推進」
薬害肝炎の原告との和解は進んでいるが、感染経路を特定
できずに闘病生活を強いられている方々から寄せられる声は
後を絶たない。でも「過失」を証明することはきわめて困難で、
その結果責任を追及することも難しいというジレンマに陥る。

輸血後肝炎も同じ構図だと考えます。

約1年前にここにも書いた「無過失補償制度」は
今年から出産→脳性マヒに適用されたと聞いたが
C型肝炎にも導入を検討する余地はないんだろうかと思う。

最後にこんなニュースもありました。
寄生虫の治療薬、C型肝炎にも効果 エジプトで臨床試験(朝日ドットコム)

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2008.11.26

ビートたけし beat TB

結核予防会のトップページに掲載されていたニュース
ビートたけし氏がストップ結核大使に就任
ストップ結核パートナーシップ日本

この度当会では、ストップ結核大使にビートたけし氏を任命し、
今後の啓発活動をご協力いただくこととなった。
ビートたけし氏は日本で最も著名なコメディアンの一人であり、
また北野武として1997年のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞等、
数多くの賞を受賞している優れた映画監督でもある。
また、2005年からは東京芸術大学大学院で映像研究家教授を務めている。

ホームレスやネットカフェでの結核患者発生など、数が減少
するにつれ、ますますアプローチが難しくなる結核対策。
国内での結核を制圧したとしても、海外での発生が
抑えられなければ対策は進まないということで発足した
ストップTB(結核)パートナーシップ。議員連盟もある。

国内ではAC(公共広告機構)で

地球くんが咳をひいて受診したら、実は結核感染だった

という支援CMが流れていて
ナレーションはオヒョイ(藤村俊二)が担当している。

今度はさらに大物タレントの大使任命で
国内外への啓発効果が期待されます。

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2008.11.25

インシデントコマンドシステム(ICS)

新型インフルエンザ発生時にも導入を求められることがある
インシデントコマンドシステム(Incident Command System)とは。

日立の電子行政用語集によれば

  • 自然災害をはじめ、各種の事故やテロなどの危機状況において、組織内および組織間を効率よく連携させ、対応策を迅速に実行するためのフレームワーク。災害対策の基本システムとして事実上の世界標準となっている。
  • 組織、用語、機能、要員の交替に関するルール、責任者の担当期間や責任範囲、代替者の明確化などを定義しており、対策チームは、「指揮本部」、「運営部門」、「リソース調達部門」、「計画・情報収集部門」、「経理・管理部門」の五つの部門で編成される。

もともとは

1970年代に従来の作業では鎮火できない森林火災が
懸案となっていた米国において、関係行政機関の特別チームが
作成したFIRESCOPE(Firefighting Resources of California
Organized for Potential Emergencies)を改良したもの(中略)
現在では災害対策の基本システムとして事実上の世界標準
となっている。(消防庁website 資料より)

単純に言えば指揮官(コマンダー)とその直轄組織である
コマンドスタッフを設置する。コマンドスタッフには

  • 広報担当
  • 安全担当
  • 連絡調整員

を置き、コマンダーの指揮を受けて動くジェネラルスタッフ
には
  • 事案処理班
  • 情報計画班
  • 資材確保班(ロジ)
  • 財務行政管理班

を置くというものだ。

山火事と言えば、以前にooyake内で麻しん流行を山火事に
例えたことがあった(はしかと山火事を参照ください)

燃え盛る新型インフルエンザ感染症の炎を鎮めるべく、
コマンダーが指揮をとり、広報担当によって県民に情報提供
される。安全担当は、事案処理班の安全や健康状態を確認。

感染症対策としては、事案処理班によって、患者の隔離と治療、
接触者への予防投薬、プレパンデミックワクチン接種などが
行われる。情報計画班はサーベイランス機能を発揮して、
状況を把握して評価し、記録にも残す。ロジ班は必要物品
(医薬品、食料品など)の調達を担当する。予算確保や制度
が必要ならば財務行政管理班の出番。

というイメージ。確かに効率はよさそう。情報計画班にあがって
くる情報の精度がキーとなりそう。

ところが、ICSがそのまま行政組織に適用できるかというと
同じく消防庁が公表している以下の資料では平素の体制から
危機管理体制への移行について

(1) 平素からの組織×ICS
ICS※の考え方を参考にしつつ、平素からの行政組織をもとに班編制及びその役割分担
を行う。ICSは災害対策の基本システムとしてデファクトスタンダードになっているが、危機
対応のみを前提としており、平素からの組織からの移行が必要である行政においては一定
の修正が必要となる。
総務省消防庁「地方公共団体における
総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」
報告資料(該当箇所は、参考資料2-1)
(1.44Mバイト)(PDF形式)

として、コマンダースタッフとジェネラルスタッフを「総括班」として
くくり、さらに並行して県の各部局長等を対策本部員とする体制を
提言している。ちょっと複雑で簡単には理解できません(汗)が、
危機に特化したICSよりは、この方が、現行の執行体制を維持
するという意味では、現実的なんだろう。

いろいろ調べて気づいた点(今夜の収穫)。

どのような体制をとろうとも、意思決定者に上がってくる情報が
整理されていなければならない(はず)。だから、あらかじめ、
担当から上がってくる情報の中身とルートを決めておくべき。
こういう訓練しておかないといけないんだはず。


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2008.11.22

赤タミフル青タミフル銀リレンザ

早口言葉ではありません。導火線の火がついた新型インフル
爆弾を押さえ込む貴重な治療薬のラインナップ。

  • 赤タミフルは行政備蓄用タミフル
  • 青タミフルは市場流通用タミフル

薬局のオモテとウラというサイトにパッケージの写真入りppt
ありました

で、銀リレンザは現在国が備蓄している抗ウイルス薬で
吸入するお薬(グラクソスミスクラインホームページに解説がある)
色は黄色ではなくて銀色だった。

で、最近のニュースとしては、赤タミフルの有効期限が
5年から7年に延長されて、年間数十億円節約(読売)。
しかし青タミフルの有効期限は5年のままとのこと(中外製薬HP)。

なーんでかフラメンコ?と考えていたら、帰りの車で被害想定を
引き上げるべき(25%から首都圏は50%に
というNHKニュースも飛び込んできて、驚ロッキー山脈。

そうなれば備蓄量も増やさないといけないことは了解。
ただしベッド数とか1日最大外来患者数とかBCP作る
ときの40%欠勤率とか、ぜ~んぶやり直さないとね。

新型インフルのマスコミ登場回数も増えてきています

今朝のとくダネの1シーン。

小倉「学校閉鎖って、何日くらい閉めるの」
笠井「さあ、それはこれから検討するのでは」

昨日の新型インフルエンザ専門家会議の中で1例発症で
都道府県内の学校閉鎖というニュースを受けての特ダネ。

閉鎖期間は約2ヶ月になる見込みなんですけどって会議
で言わなかったんだろうか。

お友だちとも2ヶ月遊べず、もちろん習い事も塾も買い物も
「自粛」して、おうちにじっとしてなければいけないの。
じゃあ何を準備すればいいだろうという議論まで行けば
よかったんだけどね。それはまたいつか出るでしょう。

これからがリスコミの勝負どころだよ(もう始まってる)。

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2008.11.17

新型爆弾と盾

物騒なタイトルになってしまって恐縮。

新型インフルエンザって本当に来るんですかぁ?
とか
ゴイチ君(H5N1のことらしい)って生まれて10年経つのに
なかなかヒトになじめみたいタイプみたいね

とか、いろいろな(特にパンデミック否定派の)質問や噂に対峙した時

新型インフルエンザはよく「導火線に火のついた爆弾」に例えられる

ただ新型爆弾の話を例えに出すなら、その中身と対処法まで
きっちり伝えないといけない時期に来ていると思う。
というわけで爆弾の中身を考えてみた(これも宿題)。

Doukasen1





ではどうやったら爆発の被害を食い止めることができるか。
ただし、導火線に水をかけるという手段は認められないという条件。

Doukasen2






そしたらバリケード(盾)で爆弾を囲むしかない。
盾を持つ人が増えれば増えるほど被害は小さく済む
可能性は高くなるかも。盾の性能を強化するような
改良も必要。災害弱者対策は特に改良が必要です。

地震などの災害と対応が違うのは、弱者だけ収容して
いただく施設(福祉避難所みたいな)を設置すると、
そこでも感染拡がるおそれがあるということ。
だからと言って在宅者見回りや電話連絡だけでは
限界があるし...

みんなで知恵を絞りましょう。

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2008.11.15

大阪発しょぼインフルエンザ

いろいろ追われているなか、満月の夜から大阪入りして
無事にお仕事終えてきました。(全国保健所長会シンポジウム
大阪発児童虐待防止の話は別エントリーで書きます。

戻ってからみたニュース(産経)
大阪でインフルエンザ早くも猛威 全国の4割占め学級閉鎖相次ぐ

大阪府内で、インフルエンザが例年より2カ月も早く猛威をふるっている。
すでに学級閉鎖が相次ぎ、国立感染症研究所感染症情報センターによると、
府内の患者数は今月2日現在、全国総数の4割を超える214人。

ちなみに44週(10月27日から11月2日)までの報告患者数は全国が525人。
沖縄県は20人。沖縄県感染症情報センターからエクセルダウンロード可能。

今年は大阪発で流行が始まるかもしれないと専門家。

「局地的に流行するケースが大半だが、今年の大阪の場合は
比較的広範囲で、持続的な傾向もある。大都会で人口も多いため、
このまま近畿地方に波及する可能性もある」

ギューギュー詰めの立ち飲み屋や、満員電車を見ていると
感染が広がる要素は十分あると思う。さらに伊丹空港では
手荷物検査場場から飛行機の中までもずっと行列だらけ。
この中にスーパースプレッダーがいたら、あっという間に
全国拡大。

いつの間にか新型と重ねて考えてしまうが、でもこれは
季節性インフルエンザの話なので、手洗いうがい励行
(アイスコーヒーのことではない)で防ぐことも可能である。
感染症対策の基本を今から身につけるチャンス。あとは
どうやったらあの人ごみを緩和できるのか。新型だったら
どうなるんだろうという視点でwatchしよう。

タイミングよく、ちょうど金曜日に今冬のインフルエンザ総合対策
厚生労働省ホームページ2008)も発表されている。
キャッチコピーは

<あ、その咳、そのくしゃみ~咳エチケットしてますか?~>

面白いのはCDCのレポートよりも2週間早く発生動向を
把握できるというGoogleのFluTrend
昨シーズンの両者の比較動画も見ることができる!。検索ワードが世間の関心事を反映しているのは
わかるが、発生動向まで把握できるという話は興味深い。

ということで、今後の発生動向が気にかかるところです。
どうか、しょぼインフルエンザになりますように。

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2008.11.09

点滴バーって何だバー?

明け方宿題をしながら聞いていたNHKラジオのモノトーナスな声で
最近話題のキーワードみたいなコーナーで「点滴バー」を取り上げていた。

点滴バーとはこんな場所(TENTEKI10)で、
自分でメニューを選んでカウンターでワンショットではなくてドリップ。

  • 自由診療(保険手帳いらない)
  • 医師の診察付き
  • 時間は10分程度
  • オプションからコースを選択可能
  • 保険診療を行う診察室部門に併設

ということで、気軽に「ちょっと点滴してくる」と言うふうに受診可能らしい。

自らが選んだ薬剤を点滴させるという点はちょっと心配だが
4つのカウンターと2つのソファーに並んで注射を待つ列が
できているかもしれない。

先生、注射をしてくれれ
と外来や救急室で頼み込む患者さんはいまだにいると思われる。 点滴をすると元気が出るという考えは根強い。

若き頃の研修医仲間にはそういう要望には聞く耳を持たず、

「ボトルを出してあげるから家に帰ってコップに入れて飲みなさい」

という奴もいたが、診療所レベルでこれをすると
「今度の医者は注射もできない」

と噂されたものだ。難しいね。

とは言っても、ここまでビジネス化しているとは驚きですね。
くれぐれも静脈穿刺による感染など起きませんように。

新型インフルエンザ発生時には、短期間に多くの人に注射する
ワクチンショットバーになってくれることを期待します。

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2008.11.03

Radioで聴いてBlogで確認

新型インフルエンザに関する取材を受けた。
FM沖縄の朝の番組「モーニングビュー」。

新型インフルエンザの名前をよく見聞きするようになったが

内容がどんなもので、発生したらどうなる?今何を準備すればいい?

取材は録音テープに収め、先週番組で放送された。
放送も聞いたけど、その内容は後日番組ブログでも
確認できた。一部転載します。



Q1新型インフルエンザとはどういうウイルス?

新型インフルエンザは、現在鳥からヒトに感染している
鳥インフルエンザウイルスが変異して、ヒトからヒトへ
簡単に感染するようになった場合に発生します。誰も
免疫を持たないウイルスなので、人口の約25%が感染
すると想定されています。


Q2もし、流行した場合私たちの生活にどう影響がありますか?

県内で流行した場合に心配されているのは、一度に
多くの患者が医療機関にかかると、外来や入院という
医療機能がパンクすることです。また、職場や家庭内で
患者が発生して、流行が約2ヶ月程度続くと想定して
いるので、各企業では仕事を休む人が続出して活動が
できなくなり、社会生活に影響が出る恐れがあります。

Q3私たち各家庭でできることは何ですか?

県では新型インフルエンザの行動計画を策定して、
関係機関と取組を進めています。
医療機能がパンクしないように、流行の程度によって
診療する医療機関を設定したり、治療薬(タミフル)の
備蓄などを行っています。保健所では、患者数を把握
したり、接触者の調査を行い感染拡大防止に努めます。
また、最も有効な感染拡大防止策の1つは、感染者との
接触を避けることなので、県民の皆さんに外出の自粛を
要請したり、学校の休校、集会の自粛などをお願いする
ことになります。

各家庭では、パンデミック(大流行)時にあまり外出
しなくても済むように、日用品や食料品やマスクなど
医薬品を備蓄を行って頂きたいと思います。
また感染症を防ぐ基本は手洗いですので、日頃から
手を洗う習慣を身につけて下さい。また咳がある場合
にはマスクを着用するようにしましょう。
また、万一発症した場合や保健所や医療機関に必ず
電話をしてから受診できるようにして下さい。


このような問答の合間に、パーソナリティが適宜コメントを はさんで、聴取者にメッセージを送っている。

放送のときに聞き漏らしたりしても、後日ネット上で確認
することができる。こういうコンビネーションは実際の対応
(県民への情報提供)へも応用できるかもしれない。

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