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2011.03.05

国際結核セミナーの復命(長いかも)

参考にどうぞ。


3月3日 国際結核セミナー (主催:結核研究所) 「結核ハイリスクへのアプローチ」

特別講演ではWHO西太平洋地域事務局の結核ハンセン病課の
大菅医官が、「WHO西太平洋地域の結核対策ー現状と新5ヶ年戦略」
と題して講演。この地域の課題として、未発見の潜在結核患者が多いことや、
多剤耐性結核が多いことが挙げられた。国別では中国、フィリピン、韓国、
ベトナム、カンボジア、ラオス、モンゴル、パプアニューギニアが高蔓延状態
となっており、新5ヶ年戦略でも重点的に、結核診断の強化や質の高い治療を
提供する等の対策が取り組まれることになっている。結核対策は以前は
途上国と日本を含める先進国では中味がちがっていたが、現在は同じ課題を
抱えているために、先進国で行われている対策をいかに途上国に広げていくか
というチャレンジである。


続いて行われたシンポジウムは「結核リスクへのアプローチ」と題して、
立場の異なる7名のシンポジストが発表を行った。

まず、結核研究所の森亨名誉所長がリスクグループの考え方について説明した。
世界的には、HIV感染のほか、糖尿病、TNFーα阻害剤、そしてたばこ
リスク要因とし注目を浴びているとし、特にたばこは今の我が国の結核患者
のうち、男性では23%、女性では6%で合計17%が喫煙により過剰に
発生しているとした。
またたばこと関連が深いCOPDでは、発病や死亡のリスクが高まることが
わかっている。生命予後が悪くなる理由としては、

  • 基礎疾患としてのCOPDが病像を悪化させる
  • COPDのために結核の診断が遅れることが原因となる

ことが指摘されている。最後に、IUATLD(国際結核肺疾患予防連盟)の
ガイドブックに乗っているABCforTBを紹介した。
すなわち、結核対策従事者は
  • ask問診:喫煙状態、受動喫煙の状況を繰り返し聞く
  • brief advice:禁煙、家庭内無煙化の勧め
  • cessasion suppor:t必要な支援の提供 を行うべき

としている(数分間の時間があればできる簡単な介入)


続いて東京都福祉保健局の宮本謙一氏によって東京都の取り組みが発表され、
特徴としては、

  • 全国と同じように高齢者の罹患率が高い(特に80歳以上は増加傾向)
  • 大都市特有の問題として、住所不定者等の罹患率が高い、
  • 外国人の結核が増えている
ことがなどが紹介された。
その対策としては、
  • 高齢者を発見するための普及啓発(医療、介護サービス提供者へ)
  • 住所不定者を発見するための重点対象者健診の実施+接触者健診の強化
  • そして両者に有効なDOTSの推進と地域連携体制の確立
を行っている


結核研究所臨床疫学部の内村氏は、都市結核の疫学状況として

  • 罹患率の地域間不均衡と都市部への集中化
  • ぱっとみて西高東低 大阪湾に面した自治体で高い
  • 20ー49歳では都市部での発症が多い=今起こっている最近の感染による発病が都市に集中

という特徴を挙げた。
この状況は国全体として低蔓延状態になっている欧米諸国ではもっと顕著に
現れるので、日本でも今後の課題となるであろう。
都市内部の結核罹患について分析したところ、失業率や独居率など社会経済的弱者に
関する要因と罹患状況に強い関係があったことを紹介した。
今後は高罹患地域の局在化(スポット化)となることが想定されるとした。


続いて、座長の吉田道彦品川区保健所保健予防課長が、 刑務所の結核すなわち
「矯正施設における結核の発生状況」を報告した。
それによると矯正施設は高いリスク要因を持った人(薬物中毒や外国人など)
が集まる場所として 日本でも最近注目されている。
データでも罹患率は200から300(人口10万対)と高いが、
そのうち8割が入所後に発見されたということである。
日本ではまだガイドラインがないが、米国のガイドラインではリスクの高い理由として、

  • 発病ハイリスク因子が高い人が多く入所
  • 施設の物理的構造(換気悪い)
  • 出入りが多い
が挙げられているとした。


続いて、結核予防会第1健康相談所の田川氏は「外国人結核の現状と対策」と題して、
在日外国人の結核リスクとして

  • 結核罹患率が高い(中国、フィリピン、韓国等)
  • 薬剤耐性率が高い(本国の高い薬剤耐性率)
  • 治療脱落率が高い(言葉の壁、経済的要因等)
という特徴をあげた。
取り組みとしては、啓発資材の提供、新宿区が日本語学校就学生に結核健診を
行ったところ、0.2-0.5%の高い罹患率であったこと、さらに治療途中帰国者への
対応により治療完遂に至ったこと等を紹介した


次に国立病院機構東京病院の永井氏は「HIV合併結核の動向と新展開」と題し、
まず大きな問題としては新規患者のうちの約7割が結核感染したことを契機に
HIV感染に気づいたことを示した。やはり

結核になる前にHIV感染に気づくべきである
と主張した。
東京病院では結核患者に全例HIV抗体検査を実施しているとのことであった。
また、HIV合併結核患者の治療上の問題点として、薬剤の副反応が出やすいこと、
薬剤の相互作用も起こり得ること、さらに免疫再構築症候群もあることから、
「できるだけ抗HIV療法をできるだけ遅らせたい」という意見であった。
米国福祉保健省が結核治療開始後に早期(8週以内)に開始HAARTを推奨
しているが、現実的には結核の治療が落ち着くまで平均12週前後かかるだろうと述べた。


最後のシンポジストとして登壇した国立国際医療センター研究所の慶長氏が、
宿主の免疫応答に影響を及ぼす遺伝要因について研究者の立場から発表した。
現在、ベトナムのバックマイ病院等と共同研究を進めており、研究のアプローチ
としてゲノムワイド(探索的)アプローチ(広く調べる方法)と、候補遺伝子
アプローチ(仮説を検証する方法)を説明した。
リスクとなる遺伝要因を明らかにすることで、病態メカニズムを明らかにして、
リスク自体を減らすための対処方法を見いだす(新規治療やワクチンによる
免疫力の強化)ことが期待できるとした。


さまざまな視点から結核のリスク要因についての新しい知見が紹介され、
内容の濃いシンポジウムであった。


他のセッションのレポートはまた今度ね。

pomeraで打って、ipod touchでQRコードを読んで、evernoteに送信。
うちに帰ってきて貼付けました。

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