「市の対応は完全に間違いだ!」というのは本当か?!
結核ネタが続きますが、気になる記事があったので取り上げてみます。
横浜市の職員が結核に集団感染の記事(7月13日)
asahi.com マイタウン神奈川に掲載←もう消えちゃった
横浜市消防局危機管理室の職員が結核に集団感染した問題で、
市は震災前に52人を「濃厚接触者」としながら検査をせず、
うち28人を被災地に派遣したことが分かった。「感染しても
すぐにはうつらない」と判断したという。(中略)
この問題は12日の市議会常任委員会でも取り上げられ、委員から
「検査もしないでなぜ安全と判断できたのか」
「市の対応は完全に間違いだ」と批判が続出。
こういう事例が自分の保健所で起きたら、どう対応するんだろうか
という視点で、横浜市の対応を振り返ってみましょう。
横浜市記者発表(6月20日)資料より
1 患者の概要
- 40歳代 男性 消防局勤務
- 平成22年 8月 職員定期健康診断にて異常なし
- 12月頃 咳・痰の症状が出現
- 平成23年 2月 医療機関にて精密検査実施
- 3月 3日 喀痰の菌検査の結果、結核と診断
- 3月 4日 専門病院に入院し、治療開始
- 5月25日 治療により感染性が消失したことが確認され、退院
2 職場同僚等への接触者健診の概要
(1)対象者は患者と同じ職場に勤務していた職員全員 52人
(2)健診の経過
- 職場所在地での健診対象者 46人に対し、健診を実施
- 4月 4日~6月3日 胸部エックス線検査実施。発病者なし。
- 5月16日~6月6日 60歳未満の対象者40人に血液検査(QFT)を実施。
3 検査の結果
- 結核の発病者(ただし感染性ではない)1例
- 結核の感染者 24例
- 異常なし 25例
- 検査中 2例
3月3日に発生届けを受けて、接触状況を調査したところ
結核を感染させる可能性がある期間に濃厚に接触した人が
合計52人いることが判明した。
index case(感染源となる患者)との最終接触は3月であるが
症状はその前(資料によると12月頃?)から出ているので、
この時点でチェックすべきは
- 濃厚に接触した人の中に、すでに結核を発病している人がいないか
- 濃厚に接触した人の中で、結核の感染を受けている人がいないか
の2つ。
1(発病の有無)については、
- QFTで感染の有無を確認
- QFT陽性であれば胸部X線検査
となります。
2(感染の有無)については
- 最終接触から8〜10週後にQFT検査
問題となっている「検査の時期」については
最優先接触者(下記)の場合で、登録時(3月)の時点ですでに
2ヶ月以上の接触があれば、直後に行うべきとある
- 小学校就学年齢前の乳幼児
- ハイリスク接触者(=HIV 感染者,免疫抑制状態の者など)
- 接触者の職業が,いわゆる「デインジャーグループ」に属する場合
(教職員,保育士,医師,看護師など)
それ以外の接触者については、最終接触から2ヶ月後に検査を
すべきとある(以上、結核接触者健診の手引き第4訂版より)。これだと5月の検査でもほぼOK。
「完全に間違い」ではないことになります。
これから被災地に赴いて、体力の落ちている避難所住民の方々と
直接接触することがあるのなら、いわゆるデインジャーグループと
同等に扱うという考え方もあるかもしれないけどね。
判断難しいところです(みんなで考えましょう)。
QFT陰性でも、フォロー中止とならないのは、
接触者の所属集団のQFT陽性率が高い場合,または既に多くの
二次感染患者を認める場合などは,終了せずに経過観察を続ける。
ためでしょう。
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